資本論の要約~実は、この世の中は、資本主義は、残酷な世界だった
2020/10/18
by 池上彰
社会は商品で成り立っていて、商品には使用価値と交換価値がある。他人にとって使用価値があるものが商品である。商品は、人の労働が内在しているので、商品の価値は、人の労働の量によって決まり、労働の量とは、労働時間である。
すべての商品を一定の比率でイコールで繋げる商品が、貨幣である。貨幣の機能は、価値計測、交換、保存である。貨幣は保存できるから、貨幣はお金を欲しがる。
商品を使うことで、新しい価値を生む独特の商品を労働力という。労働力という商品は、労働者の労働時間である。資本家は、労働者に、労働力の再生産費しか払わなくていい。
労働者が再生産費を稼ぐ時間の労働を必要労働といい、それ以上の労働を剰余労働という。剰余労働が生み出す剰余価値は、すべて資本家によって搾取される。
資本家による搾取が行き過ぎると、資本主義の終わりを告げる鐘が鳴り、社会主義革命が起こる。
という思想のもと、資本論は描かれた。
資本主義と社会主義
資本主義の崩壊を怖れた資本家は労働者の権利を認めた結果、資本主義は崩壊しなかった。社会主義は平等であるから、労働しても労働しなくても同じなので、人々は労働しなくなり、社会主義は崩壊した。社会主義が自滅しただけだが、資本主義国は、資本主義国が勝ったと考え、さらに資本主義を押し進めた。
市場は、需要と供給のバランスで、価格は決まり、市場に適応できなかったモノは、淘汰されていき、経済は発展していく。この思想が自由主義である。自由主義のアメリカでは、企業の採用も解雇も自由であるため、恐慌が起こった際には、労働者は解雇される。
資本論は、商品からはじまった
マルクスの資本論は、『世の中のモノはすべて価格がついている商品である。商品を研究することで世の中がわかるかもしれない。』という仮説からスタートした。
社会は商品で成り立っていて、商品には価値がある、価値があるものが、富である。だから、” 社会の富は、商品の集合体 ” であるということができる。
人の外部にあるもので、人の何らかの欲望を満たすものである。
使用価値 と 交換価値 がある。
欲望を満たす目的のために使用することで価値を生む。
すべての商品は、一定の比率でイコールでつなげられる。
メロン1個はリンゴ10個と交換できる。
人の労働とは
『人の労働は尊いもので、人の労働力があってこそ、すべての商品には、使用価値がある。』というキリスト教的思想の労働価値観が、根底にある。
商品の価値は、人の労働の量によって決まる。労働の量とは、労働時間 である。労働時間は、社会的に平均的な労働時間のことである。(サボった時間は含めない。)
他人にとって使用価値があるものが商品 である。自分で欲望を満たすために作ったモノは、使用価値はあるけど、商品ではない。
無人島で米や野菜を自分で生産する自給自足の生活においては。米や野菜は商品ではない。使用価値はあるけど買い手がいないからである。
社会的な労働とは、自分が働くことで、誰かが喜ぶこと である。それは、人の社会的な繋がり を表している。
別々の仕事をして、分業しているから、社会の富は増え続けている。社会は、分業と交換で成り立っている。農家が米を作り、漁師が魚を獲り、畜産農家が鳥を飼育するから、交換によって様々な食料が手に入る。
単純労働の積み重ねが、複雑労働であるから、同じ労働時間でも複雑労働の方が、価値が高い。技術の取得に時間を要しない労働、マニュアル化されている労働を単純労働という、その逆が、複雑労働である。
貨幣の誕生
日本では貨幣がない時代は、稲が交換手段だった。稲を「ネ」と言っており、「ネ」は値段の値という語源である。
中国では貝が交換手段であった。そのため、お金に関わる漢字は「買、貯、貴、貧」など貝が使われている。
ローマ帝国時代は、兵士は、労働の対価は塩だった。塩を「サラリウム」と言っており、「サラリウム」は「サラリー(給料)」の語源である。
こうして、世界各国で、交換の仲介役、貨幣の源が誕生した。
商品には使用価値に違いはあれども、すべての商品は、一定の比率でイコールで繋げることができる。すべての商品を一定の比率でイコールで繋げる商品が、貨幣 である。
金銀は商品の一つだが、社会が貨幣を求めた結果、世界各国で金銀が貨幣の価値を持った。世界各国で、金銀が貴重な資源として認識されていたことが伺える。
『商品を作って、売ってお金を得て、得たお金で商品を買う』
というサイクルが社会の仕組みとなる。
商品の価値は労働であるから、
『 労働 → 商品 → お金 』
と労働はお金と形を変えた。
お金は、もともと重さを測る単位だった。
金(Gold)は、お金として使っているうちに擦り減っていき、実際には、価値が低減している。しかし、記載されている数字で取引は行われ続けるので、金(Gold)の量よりもその数字自体が意味を持ちはじめる。最初は、金(Gold)の数字は、金(Gold)の量と表わしていたがそれが形骸化し、単なる記号になった。
資本家の誕生
価値をはかることができる
交換することができる
保存することができる
お金が保存できる機能を ” 貨幣退蔵 ” という。
お金は保存できるから、人はお金を欲しがる。
お金を欲することを ” 黄金欲 ” という。
お金は本来は何かを買うための手段でしかないのに、価値を保存できることで、貯蓄が目的になる人がいる。これを、” 黄金欲の目覚め ” という。
というのが、貨幣の誕生の由来であり、社会の仕組みである。
『 お金 → 商品 → お金 』
ということを考える人が、現れる。
最初にお金があって、そのお金で商品を買って、その商品を売って、お金を得る。これだと等価交換になって利益が出ないので意味がない。買った商品に付加価値を付けて、買った価格より、高く売る。商品に付けた付加価値を剰余価値といい、剰余価値で増えるお金を資本といいう。剰余価値によって、お金が、貨幣が、資本に転化し、資本家が誕生した。お金を持っているだけではお金持ちでしかなく、資本家とは言わない。剰余価値を作って、お金自体を増やそうとする人を、資本家という。資本家の中には、剰余価値を作ることではなく、お金を増やすことが目的になる人もいる。
労働者の誕生
資本家が、市場から商品を買って、その商品を使ったら価値が増えて、剰余価値が得られた。その商品は、労働力である。
その 商品を使うことで、新しい価値を生む独特の商品を労働力 という。
資本家は、労働者ではなく、労働者の労働力を買う。労働者を買えば、それ奴隷である。労働者とは、労働力を売ること以外に生活の糧を持たない人である。
資本家と労働者は市場で、需要と供給のバランスで取引しているので法的に対等な関係である。資本家は、労働者から労働力を買って、労働させることで剰余価値を得る。これが 資本主義 である。
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