『民法改正~契約のルールが100年ぶりに変わる』要約
2020/11/19
経済活動をゲームに例えるなら、民法はそのゲームの基本的なルールを定めている法律である。
企業間の取引から、日常の衣食住に関わる活動までを含む、経済活動は、契約という制度を用いて行われる。
六法は、国の根幹を定めている主要な6つの法典
- 憲法
- 民法
- 刑法
- 商法
- 民事勝訴法
- 刑事勝訴法
民法は、私法の一般法について定めた法律
- 総則
- 物権
- 債権
- 親族
- 相続
民法は、社会の取引の法律的なルールである。
法律は、裁判の基準となる。また、社会における人間の行動のルールである。しかし、法律の条文の言葉だけでは、どのような場合に何をすべきか、またある行為をすればどのような効果が生ずるか、などの細部がはっきりしないことが少なくない。
そこで、法律を「解釈」して、その条文の趣旨からすればこうなる、という細かなルールを作る作業が必要となる。これが「法の解釈」であり、そうして作られた理論は「解釈論」と呼ばれる。
思考枠組みとしての民法
経済学は、『財と財が需要と供給のバランスの中で交換されるという市場モデルを作り出して、現実を理解しよう』とする。経済学は、価格決定のメカニズムに視点を置いたからである。
民法が対象とする現実を、仮に『経済的な取引社会』と考える。その現実を眺めると、日々、生じている取引は複雑である。取引は、個々において、さまざまな事象がある。それを法的に理解することは、容易ではない。
ルーマンの社会学では、現実があまりに複雑であるとき、『人間はその複雑さを縮減したシステムを作り出して対応しよう』とする。
民法は、『複雑な取引社会の現実を、権利と義務という概念によって表現しよう』とする。民法は、侵害に対する救済手段の体系だからである。
経済学の市場モデルの中では、市場取引は、需要と供給のバランスを一瞬で定める。民法の世界では、個別の取引の中の人間同士の関係を権利と義務で表現し、ルールが精緻に体系的に用意されている。
ここで体系的とは、一切の矛盾のないような構造的なルールとなっていることである。
いずれも、基本は自由な取引を尊重するという思想であり、「契約自由の原則」が採用される。違法でない限り、自由な合意に基づいて契約関係を形成できる。
契約自由の原則
旧社会主義国が市場経済を導入するときはもちろん、社会主義体制を維持したままでも、市場経済を導入するためには、まず契約法が制定される。自由主義的な契約法が、市場経済には必要である。
民法、特に、契約法が想定している取引社会は、経済学が市場モデルで説明しようとした社会である。
「契約自由の原則」が採用され、人々が、取引の相手に誰を選択するか、何を取引するか、どのような条件で取引するかを、原則として自由に決めることができる。「契約自由の原則」が保障されてはじめて、市場メカニズムが機能する。
契約法が市場取引の前提となっている。現実には、契約法と市場取引の関係は、もう少し複雑である。市場の発展が、契約法に影響するという側面もあるからである。
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