【本要約】「ついやってしまう」体験の作り方
2020/11/30
体験のデザイン
誰かの心を動かしたい、わかって欲しい、行動させたい。どうやったら、人の心を動かす体験を作り出せるか?高機能、高性能だけの商品は売れなくなってきている。心を動かす体験をもたらす商品やサービスこそが求められる。
体験デザイン…心を動かす体験のつくりかた
「体験」ということ自体が抽象的で、うまく言葉にできないものである。
体験デザインの持つ力
「つい」やりたくさせてしまう
「つい」熱中させてしまう
「つい」誰かに言いたくさせてしまう
言葉のデッサン…観察して言葉にする作業
スーパーマリオ
ルールを知らなかったら、遊べないから、事前にルールを伝えなければならない。大切なことは、最初に伝えなきゃダメだ。1番大切なルールとは、プレイヤーが瞬時に読み取れる「自分は何をすればいいのか」という行動である。
マリオのデザイナーは、プレイヤーが1番大切なルールに従って行動したとき、自然とクッパが倒されるような仕掛けをデザインしなければならなかった。
マリオの1番大切なルールは、右に行くこと。
それを伝えるために、マリオは帽子を被っているし、ヒゲを生やして、右を向いている。クリボーは、右端から横歩きで現れる。怖い顔で画面を正面にして現れる。
体験デザインは、人の気持ちを考えることである。右に行くのかなと仮説を立てて、不安の中で実際に試してみて、仮説が当たって喜ぶ。心の文脈こそが体験の意味を決めている。
「自転車に乗れますか?」って聞かれて、「乗れます」って多くの人が答える。それは、自分自身の力で自転車の乗り方を体得したからである。自分で学び、自分でできるようになったことは、自信が持てるし、疑わない。
一方で、自ら体得する経験を伴わず、人から教わった知識だけのことには、自信が持てない。
直観のデザイン
マリオのデザイナーは、右へ行くことを何よりも、先に伝えたかったから、「おもしろそうだ」と感じさせることすら、捨て去ってしまった。
直感のデザイン…マリオが右へ行くことを直感させる。
直感デザインには、必ず歓喜が伴うので、直感デザインの連続によって、プレイヤーは、おもしろいと自覚できるようになる。
体験デザインの基本戦略は、直感デザインの連続である。
1 + 1 = ?
これは、『解け』と書いてないのに、頭には、『2』という数字が出ている、無意識に解いている。
人の行動の変化は、シンプルで簡単であるか否かである。目の前にあるものが、十分にシンプルで簡単であるなら、人は勝手に解いてしまう。
逆に目の前のモノが複雑で難しいと感じた時、人は解こうとしない。直感デザインの体験の成功確率を上げるためには、体験そのものをシンプルで簡単にする。
学習心理学における初頭効果…時間をかけて学んでいくとき、体験のはじめ頃に集中力や学習効率が高まる。
ゲーム中はプレイヤーにとって踏み台で埋め尽くされ、学習の機会に満たされている。だから、ゲームは子どもに人気がある。子どもが全世代で最も強く学びの体験を求める。
人々に共通する脳や心の性質、共通認識を利用することで直感デザインできる。
「良さ、正しさ」は、デザイナーのエゴである。「わかる」は、「良さ、正しさ」よりも重要である。商品やサービスの「良さ、正しさ」を伝えるよりも、まずは、商品やサービスとの関わり方が直感的にわかることを優先するべきである。
人はなぜゲームで遊ぶのか?ゲーム自体がおもしろいからではなく、プレイヤー自身が直感する体験そのものがおもしろいから、遊ぶ。
驚きのデザイン
疲れと飽きが、直感デザインが抱える致命的な欠点である。直感デザイン「仮説→試行→歓喜」は、心の動きでは「不安→歓喜」が繰り返されるので、疲れる。
心理学の心的飽和…脳は同じ刺激が何度も繰り返されると反応が徐々に弱まっていくようにできている。
直感デザインによる学習の連続をあえてストップし、疲れや飽きから解放するための体験デザインが必要である。予想外のものが目の前に現れたとき、心は疲れや飽きを捨てて興奮する。予想が外れるという体験デザインが必要である。
日常を破壊するタブーなものは、生活には登場しないとプレイヤーは考えている。デザイナーは、タブーを登場させることで、プレイヤーに予想を外させ、疲れや飽きを癒す。
ドラクエは、王道で教科書的なゲームではなく、プレイヤーを、ことごとく裏切る非教科書的なゲームである。
驚きのデザイン…誤解→試行→(予想外に)驚愕
体験は、人間が本能的に欲するものか?
と思考する。
体験は、目を背けたくなるものか?
と思考する。
情報を直感的に理解、学習してもらうための場面と驚きや興奮を引き出す場面の2種類の体験がコンテンツに含まれている。直感デザインと驚きデザインを組み合わせる。
ゲームは生活必需品ではない。だから、驚きが必要だ。
ゲームとは物語
ゲームで遊ぶことは時間の無駄なのか?ゲームの意義とは何なのか?
文字で表現しなくても、物語は成り立つ。
物語論による物語の定義…「何があったか」「どう伝えるか」
ゲームは、文章、音声、映像と同じく、物語の語り方の一つである。環境ストーリーテリングー環境の中に配置された情報をプレイヤーが自発的に集めながら物語を構築していく。
ゲームとは成長
体験デザインにおいて、時間の概念は、重要である。
体験デザインである伏線…伏線の気付きの快感は強烈で、誰かに話したくなる。
ゲームの中で展開される架空の物語は、あくまでプレイヤーが成長する体験をデザインするための手段である。
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人は、穴があると埋めたくなる。「3」を思い浮かべるが「9」は、思い浮かばないのは、穴を認識できていないからだ。
リズムは時間という矢印の上に等間隔で空いている穴である。リズムに乗るのは、時間に空いた穴を、収集するようなものである。
残酷のデザイン
心理学におけるツァイガルニク効果…心は解決済みの問題に対してはあっさりと緊張感を解いてしまう一方で、まだ解決しきれていない問題へは緊張感を保つ。
疲れも飽きも知らずに繰り返せることがあれば、それは才能や天職と言っていい。
マリオのBダッシュは、ゲームの難易度をプレイヤーが自己調節するために、存在する。
ゲームは、プレイヤーに「失敗は自分のせいだ」と感じさせなければならない。プレイヤーに「もっと上手くなりたい、成長したい」と本気で思わせるためには、失敗させた上で、自分ごととして後悔させるしかない。
ゲームは、プレイヤーの行動に沿ったリアクションを返さねばならない、フィードバックこそが、ゲームの最も基本的な構造である。
残酷デザイン…目の前の人の感情を自分のことのように感じる心の動きを司っているミラーニューロンの効果を用いて、ゲーム内で、主人公を残酷にする。
物語のデザイン
神話学のジョーセフキャンベルは、神話を分析して、共通の型を見つけた。
<英雄の旅>
- 天命を知り
- 決意して旅に出て
- 境界を越え
- 仲間と出会う
- 最大の試練に立ち向かい
- 変容・成長して
- 試練を達成する
- 家に帰る
旅とは旅という体験自体が本質である。旅を通して成長して、変わる。
ゲームも体験自体が本質であって、体験を通して、プレイヤーが変わることに意義がある。プレイヤーが自分自身の成長に気付かなければ意味がない。
ゲームの終わりにプレイヤーをスタート地点に戻すことは、<英雄の旅>の最終ステップが「家に帰る」こととと同じである。
過去の自分と、今の自分を比較することで、成長を実感する。物語の使命は、物語の受け手を成長させること。
物語デザイン…翻弄→成長→意志
体験と記憶
記憶があってこそ、人は語る。
体験は、いったん脳にエピソード記憶として保持される。その後、意味記憶に変換されたり、長期保存されたり、強烈なエピソード記憶がそのまま保存されたりする。
エピソード記憶がそのまま保存されるかどうかは、強く感情が動いたかどうかで決まる。
「体験→感情→記憶」という流れが、人生を突き動かしている。
体験が現在形なら、記憶は過去形、体験は記憶の現在形
実用
考える…企画
わかりにくいことが問題なら、直感デザインを応用する。
疲れや飽きが問題なら、驚きのデザインを応用する。
やりがいがないことなら、物語を応用する。
考え続けると、疲れて飽きてしまうから、驚きのデザインを用いて、自分が興奮できること、共感できること、確信できることを断片的に集めていくのがコツである。そうすることで疲れや飽きを遠ざけて、考え続けることができる。
企画を考えるという体験を強く駆動するために、自分が大切にしているものを失ってしまう物語を描く。そして、自分自身で、大切なものを取り戻すための企画を考える。
伝える…プレゼン
プレゼンの資料は、スライドとスライドの間で、話の流れがプツリと切れてしまうと、聞き手の集中力が落ちてしまう。
解決方法は、次のスライドの内容を予告する接続詞を使うこと。
※本文より引用
プレゼンの冒頭のスライドを最後に示すことで、聞き手の成長を実感させる。
育てる…マネジメント
タスクを具体的な固有名詞で想起できるか確認する。
わざと間違ってみせる、間違いを体験させる。
教える側と教えられる側が、一緒に未知の体験をする。
「ついやってしまう」体験の作り方
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