【本要約】エミール
2022/4/23
ジャン = ジャック・ルソー ( 1712 – 1778 )
自然人教育
貴族階級特有の教育は、自然とは真逆の教育である。
大人は自分たちに都合の良い事物だけに熱中し、子どもが本当に求めている愛には無関心である。
男は父親の義務を果たさない。女性は母親という存在を知らない。
先天的な感覚の発達を育む
自然に任せて余計な指導はせず、距離を取りながら、3つの先生によって、成長を見守る消極的教育である。
① 弱い存在として生まれる私たちには力が必要だ。それには、自然の教育が求められる。
② 何も持たずに生まれる私たちには、助けが必要だ。人間の教育が求められる。
③ 何の分別も知らずに生まれる私たちには、事物の教育が求められる。
3つの先生によって、人は一貫性のある人生を歩めるようになる。
自然人 = 自分のために生きる人間に導く。
・15歳以降:社会人教育期
社会人 = 思いやりや共感力のある人間について教え学ばせる。
快・不快を育む
② 1 〜 12歳:児童・少年期
感覚・知覚を育む
③ 12 〜 15才:少年後期
好奇心・有用性を育む
④ 15 〜 20才:思春期・青年期
理性・道徳を教わり学ぶ
⑤ 20才以降:青年期
人間の幸福と徳について学ぶ
① 赤ん坊
自由に身動きが取れる状態にさせて、快・不快の感覚を身に付けさせる。
泣き声で対応するさい、間違った判断をしない、泣くことで命令する癖を付けさせてはいけない。
② 児童期
- 自然の中で活動する
- 好奇心を持たせ自由に運動する
- 様々な体験から五感を発達させる
- 有用性を感じる物事から学びを始める
※この時期の子どもの自由というのは、大人に見守られて成立する。
- 自然の中での体験により、体力・感覚・理性・判断力を発達させることが最重要だ。
- 現代教育の先見の明を意識した学問と一般教養は、児童期に本来必要な成長過程を台無しにする。
② 少年期
子どもに関心がなければ、無理してその会話を続けない。いずれ、有用性を感じ好奇心を持って学ぶときまで待つ。この時期は焦らず、余計な情報は詰め込まない。心と精神を清く保ち健康で頑丈な体にして12歳まで導く。
④ 思春期
この世界は自分だけのものじゃない、すべてに決まった所有者がいる。決して他人が勝手に奪ってはいけない。暴力で奪うこともしてはならない。間違ったことをしたら、素直に謝る。そして、話し合って仲良くする。
- 社会は一人では成り立たない
- 社会は「 分業と交換 」で成り立つことを、学ばせる。
職業見学 ( 業種を知る ) - インターンシップ ( 仕事の経験 )
- 工場見学 ( 分業を知る )
思春期に入り、自尊心が芽生える。自尊心を克服するために、共感する心を学ぶ。
共感する心
- 第一の格率
自分より格下と思っている人間の上に、自分の自尊心を置きがちだが、格上と思っている人にも実は不幸な事情や苦悩があるので、表面だけで判断してはいけない。 - 第二の格率
自分には無関係と感じる災難には共感 ( 同情 ) できない。
しかし「 いつその災難が自分に降り注ぐかわからない 」と想定すれば、共感できる。 - 第三の格率
人は自分に敬意を払っていない人への苦悩には無関心である。
しかし、格差 ( 不平等 ) の観念がなければ、その人の苦悩にも共感が持てる。
思春期に入ると必ず他者を意識しはじめる。他者と比べて、自尊心が強くなる。どの分野でも上には上がいる。そこで、自分の現在の能力・弱さを自覚し現状を受け止める。その時のコンプレックスを自分でコントロールする。
・挫折を乗り越えるためには、自分の可能性を信じることが重要である。
それゆえ、自然人教育で、自己コントロール能力を身に付ける。
善
我々は存在している。
自由意志を持ち、行動している。
動物の存在も認める。
生きる意志を持って行動して生きている。
- 他の自然はどうか?
- 自然にも意思はあるのか?
植物・水・大地・空・宇宙・太陽
これらの存在も認めるが変化して常に動いている。
不思議だ。
- どうやって動いている?
- どうやって発生した?
- おかしくないか?
きっと意志ある何者かが動かしているに違いない。
- 意志はある何者か、それが神ではないか?
すべての自然には、美しい秩序がある。それは、創造主神に知性と善性があるからに他ならない。
人も生まれたときは、善でも悪でもない。自然の状態だ。しかし、勝手にどちらかになる。それは、人間だけが、神に自由意志を与えられている特別な存在だからだ。真理を得るために、人それぞれに、自分の意志で善いことを探す行動をさせている。神が平等に自由を与えて、悪に転ずる人は、他者の自由と平等を奪っているのだから、間違っていることをしている。しかし、いつか、きっと本当の善に気付くだろう。
善を知り善を尽くす。
神は人間に善いことをさせるために生まれさせる。
ルソーの教育思想
教育の目的とは、みんなが平等で差別のない社会をつくる。
そのためには、自然人と社会人の共存が必要だ。
- 個人の利益だけを尊重し、自己中心に突っ走る 特殊意志
- 共同体の中で助け合う友愛と平等を尊重する 特殊意志
様々な意志が話し合い、お互いの利益になる方法を探す。とことん議論を重ねる。話し合いにより全員が納得して全員が合意した方法が、一般意志 を導く。
一般意志を以って国家と契約を結ぶ。
・自分のために生き、他者の危険も尊重し、社会で共存できる自由な人間を育てる。
・人民主権の国家を担える人間を育てる。
・エミールの幸福は、みんなの幸福
・自分の功績による、みんなの幸福
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