【本要約】年収は住むところで決まる

【本要約】年収は住むところで決まる

2021/4/20

都市とイノベーション

製品に大きな価値を与えるのは、イノベーションの段階である。

物理的な部品よりアイデアが重要な時代がやってきた。部品を作ることは難しくない。それだけで大きな価値を生み出せない。歴史上はじめて、目に見える物体や貴重な天然資源ではなく、革新的なアイデアが希少性を持つようになった。

経済の生産性向上を牽引するのは、製造業から、イノベーション産業へ移ってきた。

イノベーション産業は、その企業が集まっている地域に、高給な雇用を創出する。そして、高給な雇用はごく一部でも、別の新しい雇用を創出する。経済を構成する要素は互いに結びついているので、人的資本に恵まれている人の影響は、人的資本に恵まれていない人へも及ぶ。

教育レベルは、給料だけでなく、暮らす地域全体に影響をを及ぼす。ある地域に大学卒業者が多くなれば、その土地の経済のあり方が根本から変わり、住民が就くことができる職の種類と、全業種の労働者の生産性に好影響が及ぶ。

その結果、今日の先進国では、社会階層以上に、居住地による格差が大きくなっている。
アメリカでは、イノベーションが進んでいる都市が成長を遂げ、製造業の都市は凋落している。

従来型産業の経済と異なり、知識経済では繁栄が集中しやすい。

イノベーション企業は、イノベーションの集積地に拠点を置くことで、競争上の強みを手にできる。集積効果が発揮され、労働市場の厚みが増す。イノベーション産業のためのビジネスインフラが整い、知識の伝播が促進される。

イノベーション企業をどこか他へ移転させれば、イノベーションを生み出す力を、失ってしまう。孤立した環境では革新的なアイデアを生み出せない。

イノベーションを起こすためには、適切な生態系に身を置かねばならない。都市は単なる個人の寄せ集めではなく、様々な要素が複雑に絡み合っている。その環境は、新しいビジネスの創造を後押しする。

新しいビジネスは、新しいアイデア、新しいテクノロジー、新しい製品から創造される。
人は、互いに顔を合わせてコラボレーションするとき、最も創造性を発揮できる。

ピクサーの躍進

ピクサーは、映画会社だという認識の人が多い。しかし、元々、ピクサーはスターウォーズシリーズのジョージルーカス監督によって設立されたコンピュータのハードウェアの会社だった。後に、故スティーブ・ジョブスに買収され、現在ではディズニー傘下である。

設立初期の主力商品は、CG用コンピュータだった。コンピュータの広告のために、デモ用の短編CGアニメを作った。それが、大反響を呼んだ。CG業界の発展には、映画が必要だと考え、そこに舵を切った。コンピュータ部門を切り捨て、映画製作を開始した。

  • ピクサーは、映画という芸術の会社ではない。芸術と技術の会社である。
  • ピクサーの映画の色彩は、技術で論理的に決められている。
    その技術とは、人間の色覚についての数学的モデルを作って、映像の色彩を決めている。簡単にいえば、「数学で、人間が好む色を決めている」ということだ。
  • ピクサーの躍進は、芸術的表現と技術的創造の融合の賜物である。

イノベーション産業の雇用と資本

アメリカのイノベーション産業が躍進しても、アメリカの雇用の過半数を占めることはない。最盛期の製造業ですら、アメリカの全雇用の30%以上を占めたことはなかったからだ。

現代社会では、雇用の大多数を地域レベルのサービス業が占めている。食品業、飲食業、美容業、スポーツジム業、学校、病院は、地産地消のサービスを提供している。こうした業種は、地域住民のニーズに応えるもので、国内の他地域や、外国との競争にさらされることはない。

経済学では、非貿易部門という。サービスの生産地以外に、そのサービスを輸出できない。

アメリカの雇用の2/3が、非貿易部門である。シリコンバレーでさえ、イノベーション企業に勤務している人より、地元のお店で働いていてる人の方が多い。

イノベーション産業の雇用は、貿易可能である、貿易部門である。

雇用の2/3は、非貿易部門が占めているのに、国の経済的繁栄の牽引役は、貿易部門である。非貿易部門の生産性の向上は限度があるが、貿易部門では、生産性が日々向上していく。

貿易部門の産業での労働者の生産性が高まると、その産業だけでなく、他の産業でも労働者の賃金が高まる傾向がある。人材確保のためである。

イノベーション産業は、労働集約的である。イノベーションのために投入される資源の中で、最も重要な資本は、人的資本である、人間とそのアイデアである。

機械が資本であった製造業から、人間が資本のイノベーション産業へと時代が変化した。

そうして、優秀な人材の価値は高まった。新興企業の新しい技術ではなく、それを生み出した人材を目当てに、大企業が新興企業を、丸ごと買収するケースが出てきた。

イノベーション産業の利益構造

イノベーション産業は、利益を生む仕組みが、他の産業と根本的に違う。例として、ソフトウェアを挙げる。新しいソフトウェアを考案し、開発するには、大きな費用がかかる。しかし、一度、ソフトウェアが完成すれば、コストをかけずに、複製が可能だ。

費用 = 固定費 + 変動費

マイクロソフトがWindowsの新バージョンを開発するために発生する費用の大半は、ソフトウェアのコードを書くエンジニアに支払う報酬だ。その費用は、固定費だ。Windowsの売れ行きに関係ない。変動費は、ごくわずかである。

このようなビジネスを行う企業にとって、市場がグローバル化することのメリットは大きい。市場の規模が拡大すれば、費用をかけずに、商品を販売できる。

それは、従来型の製造業とは、対照的である。製造業では、固定費だけでなく、変動費も多くかかる。

目に見える製品を作るのは、原材料が必要だから、必ず製造費用がかかる。ソフトウェアのようなデジタル製品は、初期費用こそかかるが、複製は簡単である。そして、それが、グローバル化すると、その効果は、計り知れない。

イノベーションにより生み出される商品は、高級ブランドのバッグさながらである。原価より遥か高い価格で、商品やサービスを売ることができる。

産業のライフサイクル

産業も、人と同じように、ライフサイクルがある。

  1. 幼児期
    様々な土地で多くの小規模な事業者が活動している。
  2. 成長期
    イノベーション能力が、最高潮に達すると、集積メリットを活かすために、企業がいくつかの地域に集まる。
  3. 成熟期
    企業が生産コストの安い地域に出ていき、再び地域に拡散しはじめる。

市場の失敗

教育

都市の高技能労働者の割合と、低技能労働者の賃金に関連がある理由は、3つある。

  1. 高技能労働者と、低技能労働者が相互補完的な関係にある。
    教育レベルの高い人と働くと、低い人たちの生産性も向上する。
  2. 教育レベルの高い人がいると、企業が新しい高度な技術を導入しやすくなる。
  3. 都市の人的資本レベルが高まると、人的資本の外部性が生まれる。
人的資本の外部性
人と人が交流すると、互いに学び合う。教育レベルが高い人と交流する人ほど、生産的で創造的になる。人的交流が盛んになると、知識の伝播が促進される。知識の伝播は、国の経済成長を牽引するエンジンとなる。

人的資本の外部性により、教育レベルの低い人たちが恩恵を受ける。それは、高い教育を受けた人達が、自らの教育の生み出す恩恵を、受けていないことである。これを市場の失敗という。教育は基本的に、私的利益(教育を受けた人が受ける恩恵)に加えて、社会的利益(同じ都市に住む全ての人に及ぶ恩恵)を生む。私的利益より、社会的利益が大きい。

研究開発

ある企業が研究開発に投資すると、その会社だけでなく、同業他社の株価も上昇する。

イノベーションに対する民間の投資は、投資を行なった企業に私的利益をもたらすだけではなく、他の企業への恩恵という形で社会的利益も生み出す。

しかし、資金を負担して投資を行なっても、自社が恩恵を独占できないという、市場の失敗が生まれる。

だから、先進国の多くが、税制優遇措置という形で、研究開発に補助金を出している。

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