【本要約】言語と知能
2022/5/5
言語の進化と知能
今、史上はじめて、言語による人間の理解能力を超えた現象が人工的に発生している。
② 原始言語 〜 音声言語
③ 社会的言語化と記号化
④ 視覚的言語 〜 文字の発明
記号化の過程は不明なので、記号化後の言語の議論しかない。
原始人類は言語を持っていなかったし、進化の過程のどこかで「 人類は言語をつくりだした 」に違いない。
- 言語の起源はどこにあるのだろう?
- どのようにして言語は創出されたのであろうか?
- そこから今日まで、どのようにして言語は進化してきたのだろうか?
知能と言語とがほぼ一体的である。
- 言語は固有の形式を持つ。
固有の形式に基づいて言語は定義されてきたし、発展の経過も説明することができる。
言語をつくりだしたことは、固有の形式をつくったことに他ならない。 - 言語に対し知能には明確な形式はない。
知能にも隠された構造があり、それによって高度化されたのではあるが、その構造は言語の構造を借りて表現される。
この意味で、知能は表現上言語に依存している。したがって、知能と言語についての解明は、まず言語から始める。
言語がつくりだされた過程を「 言語の創生 」と呼ぶことにする。
言語とは何か?
言語の内容ではなく、広い意味での言語の定義に関して、歴史上最初に語られたものとして、聖書の一節が、よく知られている。
※ 言葉:ギリシャ語logosの訳 ( 叡智・理性・論理 )
言葉は、知性・知能と同義語として扱われ、それは「 神のものであった 」とされた。『 言葉は神である 』という信仰があった。
18世紀の言語起源論の中に「 言語神授説 」がある。
※「 言語神授説 」は『 言葉は神である 』という思想とも異なる。
- 「 言語は神によってつくられた 」ということだ。
- 言葉は完全であって、完全なものがつくれるのは、神のみである。
- 「 言葉は先天的に人間に備わっている 」という思想である。
言語が、最初から存在したものではなく、神によってつくられたものでもないとしたら、そして、「 人間が他の生物と同じようにアメーバ程度の原始生物から進化してきた 」とする進化学説に従うなら、そこから、現代に至る人類進化の過程のどこかの時点で「 言語がつくりだされた 」と考えるしかない。
言語をつくりだしたのは人間以外にはいないので、知能の発達が言葉に大きく依存している。
言葉以前の原始人間は「 知能的には低いレベルであった 」と考えられる。その知能は、他の生物と大同小異であったろう。
- なぜ、人間が、複雑な言語をつくりだせたのであろうか?
- なぜ、人間だけが、言語を持てたのであろうか?
これらのことを解明するには、現代の言語を調べるだけでは不十分で、言語の進化の過程を明らかにしなくてはならない。
–
・人間が、自然の能力だけしか持ち合わせないとしたら、どのようにして言語を発明することができたのであろうか?
・また、この発明に到達するのにどのような手段を持ち合わせていたのだろうか?
・この問題を説明しあらゆる困難に応じられるような説明を求める。
–
懸賞論文のテーマは現代においても未解決のままである。
- 人類が生き延びるために、知能が発達した。
- コミュニティができ、知能を共有する必要性ができた。
- 初期の言語がつくられた。
- 言語の形式の発達によって知能構造も複雑化した。
「 言語は記号である 」と整理されている。言語が創生されたとき、記号の概念はなく、後に記号化された。
表明すべき概念がどのようにつくられたかは、言語学の範囲を超える。
- 個人の主観であるうちは、つくられるのは個別認識であって、利用価値のある一般知識ではない。
- 多くの人の主観が一致しているとき、主観的な表現は、普遍的な知識になっていく。
- 主観的な言語表現が、新しい概念を形成していく。
言語を持つようになる以前の人類は、他の生物と同様の生命維持機能を持ち、動物と似た生き方をしていた。この生命維持機能は進化によって長い年月をかけて形成されてきた生体構造によるものである。
「 個体の保存 」のために餌を獲得する機能と「 種の保存 」のための交配の行動は、基本的な生体維持機能として最少限必要なものであり、事実、多くの生物が生涯の大半の時間をこのために費やしている。
言語構造
” 言語とは全く異質 ” な「 何か 」が、言語をつくり出した。言語以前に、人類に備わっていた「 何か 」は、生物としての生理機能である。
単純な細胞構造を持って生まれた原始生物が、進化に伴って行動も複雑化し、高級哺乳動物としての原始人類が誕生した。言語創生以前の原始人類の生理機能は、他の高級哺乳動物と大差ない。その中で、人類だけが言語を持ち、高度の文明を築き上げたが、他の高級哺乳動物は、この間ほとんど変化ていない。
「 潜在的な言語能力とは何か?」を問うことが、言語問題の解決の糸口である。
・伝える内容 ( 意味 )
・表現する形式
- 言語の創生以後、この構造は時代と共に変化し、複雑化してきた。
- この進化の過程において言語は常に、それ以前の言語からの発展形としてつくられてきた。
- これは今日以後もさらに進化し、形を変えていくかもしれない。
- 言語が直接観察できるのは、人類が文字を発明し、文字を用いて記録がなされるようになって以後である。
- 言語創生以前の時期において、生理構造としては、人類の生存のための原始的な行動機能やその行動制御の機能が既につくられていて、それらが「 言語創生の基礎になっていた 」と考えられる。
- 人類以外の哺乳動物を観察することによって、言語創生時期の人類の機能や行動を推測することができる。
言語は、時代と共に発展し形を変えるが「 伝える内容 ( 意味 ) 」と「 表現する形式 」からなるという構造は不変である。
言語以前の概念
言語創生以前にも、行動制御のような「 伝える内容 ( 意味 ) 」に相当するものがあったが、これに対応する「 表現する形式 」はつくられていない。これを、便宜上「 概念 」という。
・他者と情報 ( 知識 ) をやり取りするコミュニケーションの機能
・他者から様々な知識を得る機能
・蓄えた知識に基づいて判断したり疑問を解消したりする問題解決機能
- 「 言語によって表現された概念 」を単に「 知識 」という。
- 「 知識 」は言語を構成する構造の発展形である。
「 言語 」とは、そもそも「 情報 」である。「 言語 」は目に見え、あるいは耳で聞こえる形式として表現する方法である。物事の表現の仕方は一様ではないから、対象に応じた表現方法がある。
例えば「 映像 」で表す他ないものもあるので「 映像 」も「 情報 」である。「 情報 」は多様性がある。
言語で扱う概念
言語創生期では扱われる概念は単純であった。
例えば、言語創生期には言語の必要性は「 生存のために共同で狩りをする 」ような目的を達成する場合に限られた。
・狙っている対象である動物
・動物がいる場所
・狩りのときの個人の役割
・狩りの環境に関する事柄 ( 例えば風向き )
・狙っている動物のように「 実体ある物 」
・” 早い ” ” 黒い ” のような「 実体の性質 」
・相互の距離のような「 実体間の関係 」
・狙った動物との距離が近くなるまで待てのような特定の「 行動様式 」
「 実体 」「 性質 」「 関係 」「 行為 」の概念は、現実に存在する世界のあらゆる概念の一部である。言語がつくられる以前にも、原始的概念は存在していた。
原始概念の一部は「 人間以外の動物の脳内にもつくられている 」と考えられる。動物も、他の物体を認識して行動をしている。
言語創生の前提
・環境条件によって、人類が直立二足歩行という固有の進化過程を経た。
・人類は「 判断の基礎になる概念 」を原始概念として形成し、環境から多様な概念を得た。
その場合、遺伝子に含まれている以上の行動の発展はない。子が親を超えることはない。人間も、言語がつくられ、生活パターンが他の動物から変化する以前は、ほぼ同様な状況にあった。
① 認識系と駆動系を結ぶ制御系のニューロンの中に、判断のような特別な機能を持つ新ニューロンができた。
② 新ニューロンによって、概念の拡大と、並列的な概念展開とは異質な構造化が行われた。
③ ” 遺伝子による直接的作用 ” と ” ニューロンの持つ「生成」「成長」「相互連結」「学習」という重要な性質 ” によって、環境への適応能力を得た。
・言語は、概念を他者にわかる方法で表現する。
・言語は、概念の一つの形式である。
- 伝えたい概念が複数になると、異なる表現によって識別しなければならない。
- 識別のための原始言語は「 音声言語 」であった。
- 「 音声言語 」では、異なる音を発声できなければならない。
社会活動が複雑になるにつれて、人間の概念世界が広がり、言語コミュニケーションも表現が多様化していった。
音声言語には、体内で音を発生し、それを言語として発声する機能が必要である。音を発生する構造 ( 声帯 ) は、多くの生物が既に早い時期に備えている。発声機能に加えて、発声した生の音を変換し、異なる音として発声する多音化機能を備えている。
言語創生
① 概念の創生
② 概念と多音化機能と結び付け
- 同一環境に生きている多くの個体が、ほぼ同じ概念を持つ。
- 各個体が体内でつくった概念を体内の音声発生機能に勝手に結び付けただけでは [ 概念 – 音声関係 ] は、各個体ごとにバラバラになってしまうから、相互理解はできない。
- 相互理解のためには、コミュニティ内で、同種の概念を同じ言語で表すことが必要である。
[ 概念 – 音声関係 ] はどのようにして共通のものになり得たのであろうか?
→ 誰かが意図的に行ったとは、考えにくい。
学習的に可能になり得るであろうか?
→ 言語学習という形式、先生がいて教えるような方法ではあり得ない。
① 各個人にランダムに [ 概念 – 音声関係 ] を与えると当然この時点では会話は成り立たない。
② 共同生活において接触が繰り返されることによって、相互に [ 概念 – 音声関係 ] が変化する。
③ 最終的にはコミュニティ内で安定した [ 概念 – 音声関係 ] が確立された。
[ 概念 – 音声関係 ] をコミュニティ内で共通のモノにすることができ、概念の交換を可能にした。
言語による概念の交換は、新しい概念獲得の道を作った。これは、言語による知能開発であり、知能による行動パターンの変化が、人間と動物を分けるきっかけとなった。
概念の構造化が複雑な過程を経るのは、概念自体が形を持たず、常に言語を通して構造化されるからだ。一方で、言語表現の構造化は、その表現内容である概念の高度化要求があって初めてなされる。
・生得 ( 先天 ) 説
・学習 ( 後天 ) 説
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