他人に関するキーコンセプト

2021/7/20
ゲマインシャフトとゲゼルシャフト
フェルディナンド・テンニース
ゲゼルシャフト … 利益・機能・役割で結び付いた人為的な社会
人間社会が近代化していく過程で、ゲマインシャフトがゲゼルシャフトへシフトしていく。そのシフトしていく過程で人間関係は疎遠になっていく。
社会全体を覆う構造が解体されると、その下の段階にある構造単位の自立性が高まる。
格差
セルジュ・モスコヴィッシ
私たちの日本は、江戸時代まで続いた身分差別制度を撤廃し、民主主義社会を実現したが、差別はなくなっていない。
江戸時代における封建社会では、社会的な身分の違いは出生によって決まっていた。この社会では、下位層に属している人が、上位層に属している人と自分の身分の違いを比較し、思い悩むこともない。
社会的な制度としての身分制度がなくなれば、建前上は、誰にでも機会が公平に与えられる。その機会が、格差を生む。現代では、誰もが、努力によって、上位層に所属することができるようになった。そうして生まれた格差によって、下位層に属している人は、不公平という感覚を持つ。
江戸時代の身分差別制度のような、クラスによって隔てられた人々の間で、不公平さを感じることはない。同質性が前提とされている社会や組織における「小さな格差」が大きなストレスを生む。
社会が公平であるならば、その中で下層に位置付けられる人には、逃げ道がない。社会制度に不備があるから下層にいるのではなく、自分の才能や努力といった点で、人より劣っていることになる。「社会の不備が、不公平さの原因だ」としなければ、自己防衛できない。
ペルソナ
カール・グスタフ・ユング
ペルソナは、実際の自分を保護するために社会に向けた外面である。
【私たちのペルソナ】
- 自分たちのアイデンティティが脆弱で、外部環境によって歪められる。
→ 自分自身が自分らしくない言動を取るようになっていても、本人が気付かない。 - 自分たちの隠しておきたいパーソナリティが、無意識に現れる。
→ 自分が変化していること自体を、他人を通して知ることがある。
人間の人格は多面的であるから、場所によってペルソナを切り替えることで、人格のバランスを保っているのも人間の実際の姿である。
差異的消費
①機能的便益の獲得
②情緒的便益の獲得
③自己実現的便益の獲得
市場が成熟していくにつれて、①→②→③と変化していく。
私たちの欲求は、個人的・内発的なモノとして説明できない。むしろ、他者との関係性である、社会的なモノである。
そして、私たちのすべての消費は、差異的消費である。
自分で「内発的欲求による消費だ」と認識していても、そんなことはあり得ない。他人との差異を求めた結果の外発的欲求でしかない。
何らかの差異がない、差異があっても希薄であれば、商品やサービスは、市場で淘汰される。
他人との差異を明確に定義した商品やサービスが生き残っていく。
他者の顔
エマニュエル・レヴィナス
哲学は、世界や人間の本性について考察する営みである。哲学が完結していないのは、ある人にとっての答えが他者の答えではないからだ、万人に共通する答えが存在しないからだ。
他者が重要なのは、他者とは気付きの契機であるからだ。
自分の視点から世界を理解しても、それは他者による世界の理解とは異なっている。自分とは見方が異なる他者を学びや気付きの契機にすることで、私たちは、今までの自分とは異なる世界の見方を獲得できる。
全然「わからない」ことが、あるとき、急に「わかる」ことがある。
何かが起こったわけではない。昨日まで「わからなかった」ことが、なぜか、今日になって「わかった」と感じる。このとき、私という個人は、分かった後と前では、違う人間になる。なぜなら、昨日の自分では、わからなかったことが、今日の自分は、わかったからだ。
未知のことを「わかる」ためには、「今わからない」ものに触れる必要がある。
今わからないものを、わからないまま拒絶すれば、わかる機会は失われる。わかることによってかわる機会も失われる。だから、わからない人 = 他者との出会いは「自分が変わる」ことへの契機となる。これが、他者との邂逅がもたらす可能性である。

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