【本要約】学問のすすめ

【本要約】学問のすすめ

2022/3/3

「よく見てよく考えれば何でもできる。」

武士が買い物に行くことは「 使用人を雇えない 」ということなので「 貧乏で恥ずかしい 」という文化であった。

福沢諭吉は、14歳の時、年下の者と一緒になって習い事をはじめた。この時代の勉強法は、素読である。漢文の本を繰り返し読み、字や文章の意味を覚える。諭吉は文才があり、勉強がよくできた。

「 ひとつのことがわかれば、そこから、どんどん先にいける。学問はおもしろい。」

その当時には、武士が、金儲けすることは「 恥ずかしい 」という文化があり、武士は死ぬまで忠信 ( 主人に尽くすこと ) することが、当然とされていた。

諭吉は「 金持ちになりたい 」と考えていた。

諭吉の家は、下級武士であり、「 世の中は、個人の能力に関係なく、生まれた家で、その人生が決まってしまう」という身分制度に疑問を抱いていた。

ペリーの黒船来航によって、オランダ語を読める人が必要になり、そこで、オランダ語を学ぶために、諭吉は、長崎へと行った。諭吉は、オランダ語、蘭学 ( オランダの様々な知識 ) を学び、学問への意欲を向上させていった。

諭吉は23歳の時に、江戸で、蘭学塾を開く、後の慶應義塾である。

しかし、世界では、英語がスタンダードであることを知り、そこから、英語を学び始める。

オランダ語の文法は、英語に似ていたので、オランダ語を学んでいたことが役に立った。そこで、「 人は学んだ分だけ必ず前に進む 」という確信を得る。「 日本より進んだ文化を持っている世界を見てみたい 」と考えるようになった。

■アメリカへの航海中の出来事
船のルールを破ったアリメカ人に対して、アメリカ人のリーダーは、庇うことなかった。

同じ船に乗る者同士は、船のルールを守らなければならない。船のルールを守れない人は、日本人・アメリカ人は関係なく、共通の敵である。「 同じ船に乗る者は誰であろうと同じ運命を共にする仲間である 」という公平な文化であった。

身分制度が前提となっている封建社会の日本にはない、新しい文化であった。

アメリカやヨーロッパでの文化を学び、31歳のときに『 西洋事情 』を出版する。『 西洋事情 』は、ベストセラーとなり、日本の文明開化の流れを後押しした。

諭吉は、当時の攘夷運動や戦争に我関せず、「 学問への道こそが日本の文明を支える 」として、慶應義塾と改名した塾での教えに励んだ。

日本が真の近代国家になるためには、国民のひとりひとりが学問を身につけてなければならない。人々が努力し「 自分の力で自分の道を知り開いていくことが必要だ 」と考えた。諭吉は、日本人が独立自尊し、世界と同等に歩いていける道を示そうとした。

37歳の時に、『 学問のすすめ 』を出版し、明治の世の人々に、これから自分が進むべき近代文明の道を示した。

学問のすすめ
天は人の上に人を造らず
人の下に人を造らずと云えり

明治の世は、封建社会が過去のものになり、誰の上にもチャンスが訪れるようになった。人は皆平等であり、自由である。それが人間の権利である。男も、女も、老いも、若いも、貴賎もなく、人としての権利は皆平等である。

自由という権利を持つことは、大きな責任を与えられる。

責任を忘れた自由は、ただのわがままである。酒や女遊びは、社会教育妨害である。自分や他者の生命を尊重し財産を守り、自他の人格と名誉を大切にしてはじめて、人に自由である権利が与えられる。自分の責任の重さを自覚せねばならない。

自由とは「 独立できる 」ということ。独立とは、人が他から干渉を受けずに活動できることであるが、そのためには、他者を頼らず、自分の身は自分で始末を付けようとする独立心が必要である。人は真に自由であるためには、独立心を持たねばいけない。独立心のない者は、自分を見失ってしまう。

何か問題を抱えていて自分では何も解決せずに、人に依存してばかりいると次第に自分の主体性を失くしていく。役人もよくない。日本人特有の教育観で官僚勤めが最高の出世と位置付け、人生の目標にしている。周りの役人根性、ことなかれ主義に押され、自分の能力を発揮できずに、愚者に変わってしまう。

他人の考えに影響されず、自分で事態の正否を見分け、与えられた自分の責任を果たし、自分の行動に間違いを起こさない人が、独立者である。

独立者こそ、人間のあるべき姿である。
人間は、自己の独立のために、学問が必要である。

学問とは、実学を学ぶことだ。
実学教科は、読み書き・計算・地理・歴史・物理・経済・倫理である。

実学は、現実にどんな影響が出るのか出たのかがわかる教科のことである。実生活に役立つ知識のことである。実学は学問をするための手段である。学問とは、教科書を読むことではなく、身に付けた知識を実際の現場で使い経験していくことだ。

知識の応用と経験こそが、学問である。
社会に出てからが、本当の学問の始まりである。

【 人間の5つの要素 】

  1.  体
    体の各機能は自然界に接し、自然物を利用し、狩猟や農耕を行う。
    体は自分の欲求を満たすために働く道具でもある。
  2. 知恵 ( 思考 )
    知恵は物事の道理を見極め、行動するときの目的を誤らないように創意工夫する。
  3. 情欲 ( 生命力・本能のエネルギー )
    情欲は心身の働きを促進し、その情欲を満たすことで、幸福感が得られる。
    人は幸福感を得るために働く、勤労あってこそ、人間の安楽・幸福が実現する。
  4. 誠実さ ( 良心・理性 )
    誠実さが情欲を抑え、情欲の限度を決める。
    人の情欲はキリがないため、自分の情欲が道理を飛び越さないように誠実さが働く。
  5. 意志 ( 決断力 )
    意志はことを行う決心を促す。
    人の行動は、善も悪もことを行うときの人間の意志によって行われる。

この5つの要素を自在に扱うことこそ、自己の独立と成功の秘訣である。

独立者になるため、自分のなりたい自分になるため、それぞれの道で、理想を掲げ前進していく。自分の理想を実現させるためには、理想に見合う行動力が必要である。理想のみが大きく立派でも行動力が伴わなければ意味がない。

私たちは自分の能力を高めることを忘れてはならない。常に自分の能力の自己点検が必要である。自分の能力点検をして、人生の棚卸しをしてみる。

・自分を過大評価・過小評価していないか?
・生まれてから今まで自分は何をしてきたのか?
・これからどうすべきなのか?

自己管理能力を身に付け、自分の計画性を向上させることが大事である。自分の能力を高めるためには、自分の見識を深めることも大切である。見識を深める方法は、観察と推論である。物事を観察して、物事の道理を推測し、物事の因果関係を見つけ、誰かの受け売りではない、自分の考えをつくる。観察・推論・読書で知識を蓄積し、人と議論して、情報交換し、見識を深める。

正しいと思った考えは、人前に立ち発表する。人の前で自分の考えをしっかりと言える習慣を持つことも大事だ。

見識を深めれば自ずと自己の判断力も高まる。判断力というメガネは、今の世の中に暮らす私たちに必須の道具である。今の世の中には、見せかけだけモノに溢れている。本物・偽物、善悪が入り乱れて、どれが真実か区別がつかない。だから、見識を深めれば、信じたるものは信じ、疑わしい点には疑問を持ち、どれを取り入れ何を捨てるのか、正しく情報を選択できる。

人は、判断力に欠けると他人の考えにすぐ流されやすくなり、他人の目に支配されてしまう。他人の目から支配される者は、次第に、妬みや羨みに取り憑かれてしまう。自分自身の品格を得るため、独立者になるため、しっかりとした見識を持ち、自分の判断力を育む。

現状に決して自己満足せず、向上心を忘れないようにする。そして、多くの人たちから人望を得る。大切なのは、明るい態度と、ハキハキした挨拶である。信用を得るためのコミュニケーションも清潔さが求められる。

旧友を忘れず、新しい友をどんどん求め、豊富な人脈で新しい知人と交じり合い心の働きを活発にさせる。品格・人望を得てこそ、人は誰からでも頼りにされる人間になる。人から期待され信用される人間こそ、社会に出た独立者のあるべき姿である。

独立者は、社会全体の利益のために働くことが大切である。社会貢献こそが、独立者の義務である。私たちの責務は、現代社会に、私たちの活動の跡を遺し、人類の財産として、遠い後の世代まで伝えようとするところにある。

未来に向けて種を蒔く。
今日より明日がより良い日であるために。
明日のずっとその先もより良い社会が在り続けるために。
学問と共に前進することで、努力は必ず実る。

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