【本要約】成り上がり 〜 矢沢永吉
2021/12/21
本当は銭じゃない。本当は銭じゃないのに「銭だって思わせた何か」に腹立ってる。
親父は、俺の実の親父だけど、オフクロは違うんだ。俺は、その位牌のオフクロから生まれたんじゃないの。でも、親父の惚れた女じゃない。大切にしたいよ。2人並べといてやりたい。それでいいと思う。
- 今の愛情は、だいたい金で買える。
- 女の愛情も、金で買える。
「それを言っちゃおしまい」っていうのが、世の中にはある。
俺は勝ってきた。一個ずつ、一歩ずつ勝ってきた。それがもしかすると俺を孤独にしていくのかもしれない。
デールカーネギーの「人を動かす」がバイブル。

人生に大切にする三本柱を立てて、それを大切にして、それを軸に判断をする。
必要になったら自分で勉強する。興味を持ってから、図書館でもなんでも行って調べる、その方が頭に入る。「何が自分に合ってるか」を真剣に考える。自分の専門分野をまず大事にする。「大事すればいい」っていうより、命をかけなきゃいけない。自分の領域は、誰よりも知ってなくちゃいけない。
音楽に出会って「スーパースターになる」と決めてからは、苦労が苦労じゃなくなった。土方やっても、フィルム運びやっても、つらくない。
「そうだ。こういうふうに苦しいんだよな、最初のうちは。こういうことがあって、いろいろやって、最後にスーパースターになるんだよ。」と自分に言いきかせていた。
自分の人生を映画で観てるみたいなものだ。
もともと、オレにはそういう自己陶酔する才能みたいなものがあった。どう転んでも、今現在より悪くなりっこない。そう思えば明るいものよ。光を持っていた。オレには、すごいバイタリティがあった。
オレっていうのはね、「メチャクチャ安心してない」と気が済まない男なんだよ。でも、やってることは、常に不安だらけ。「どういうことか」って言えば、安心したいがために、行動する。だから、行動が早い。安心するためには、行動して裏付けを取ることだ。
マネージャーの村田がいつも言う。
「永ちゃんはいいよね。どんなズボンはいても似合うから」
似合うんじゃない。似合うようにしてるの。似合うようにしてる裏付けがあるから似合うの。ほんとは、そうなんだ。こんなズボンでヒルトン・ホテルに入ってきたら、怒られるよ。でも「あれが矢沢だ」とわかれば、許す部分も出てくるじゃん。何も悪いことしてるわけじゃないし、いちおう本人なりに精一杯着飾ってるんだから。
そこまで認めさせるには、てめえが、自分の道のほうでガンガンやらなきゃダメなんだ。ポーズだけで「ワオワオやれる」と思ったら大間違い。原宿十回行くとこを、一回にしな。それ以外は曲書いて、ツアーやって、ガキがいないとこでナオンとコオマン決めて。カッコよくいこうよ。
自分でメシ食ってる領域ってのは、生活じゃないといけない。どんな職業でも同じ、価値は変わらない。
才能は、何かを創る人間にだけ使われる言葉じゃない。
金は稼ぐよ。金稼ぐためには、いいものを作らなきゃ。いいステージをプレイして、認められなきゃ。面倒くさい商売よ、わかる?20日間ものロング・ツアー、ダテじゃやれん。オレと、地方まわってたら、わかるだろう。一日だけ観る。いいステージ。お客も「よかった」って帰る。ところが、その間に飛行機とか汽車とかに乗って、次の会場。セッティングして、再び「ワオー!」 同じにグッドなステージやらなきゃ。これを、年に150回。そしてレコーディング。
- 横を見て、他の社会人を見て比べて、ちっとも楽なんかじゃないだろ。
そう、そういうものだ。 - 矢沢が、手を抜いたら、うしろを向いたら、グッド・フレンドが去っていく。
ファンも離れていく。
アメリカに行くってのは、オレの賭けでもあったわけ。費用は、全部自分持ちだよ。通訳の人の分まで。1回、裸になった。あの時は。キャロルの印税、全部投げ出した。ソニーに立て替えてもらったりしたけど、借金だからね、それも。大勝負よ。いちアーチストがン千万借金してやるんだから。聞いてよ聞いてよ、そのへんは根性ありますよ。そのくらいの根性なくて、今の矢沢はないですよ。
「いざという時に必要だ」っていったろ、金が。そういう大勝負を逃げられないだろ。金がなくって逃げてしまうわけにはいかん。みっともないじゃない。あの時のオレっていうのは「ここから始まるんだ」って自分に言い聞かせてた。広島から出てきた時の感覚を維持しないと危険だって。やる気で震えてたよ。落ちこんでもおかしくない状況があっても、やる気で消してしまう。
解散したら、キャロルをオレから切り放す作業に移っていった。「元キャロルの矢沢永吉」。最初の、ソロになって初めてのツアーは仕方ない。通じないから。その後は、もうキャロルを取って、単に『矢沢永吉』で押せ。「キャロルの名前は使うな」とマネージャーに言ったんだ。マスコミにも、そう言ったはずだよ。
アルバム『アイ・ラヴ・ユー、OK』を作った当時、非難の嵐だった。でも「いつか勝てる」と思った。オレは言うわけ。「解散して変わらないんだったら、何で解散したんだ。」ファンだって、そう言うと思う。プライドがあるよ。たしかに、すぐはキッかったな。
矢沢永吉、ソロになった。サンプラザでコンサート。ラメを着て、『アイ・ラヴ・ユー、OK』を歌った。『夏のフォトグラフ』『安物の時計』客、唖然としてたよ。違和感が「すごかったんだ」と思う。キャロルで、ロックンロールで盛りあがってる時に、あのコンサートだもの。
過去のものを引き継ぐほど簡単なものはないんだよ。オレは、あの頃、『ファンキー・モンキー・ベイビー』みたいな曲なら、寝てても書けたよ。ナメてるんじゃない。だって、ロックンロールは、オレにとっちゃ空気みたいなものなんだから。息を吸って、吐き出せば、もうロックンロールができあがってる、そんな感じなんだよ。
オレは、色を変えた。散々だったよ、あのサンプラザの時は。安全ラインを越えたでしょう、その辛さがほんとに肌で感じられた。
だけど、うしろを向きたくないんだ。何で解散したんだ。そうだよ、オレは、これからは矢沢永吉として新しい世界をつくるというか……。どこまでできるか判らないけど。だから、キャロルの遺産みたいなものを食いつぶして生きていくなんて、オレはいやだったんだよ。
もし、ソロになって、「ひとりでキャロルと同じことをやろう」としてたら、それは「目的がある」とは言えない。そうじゃなく、矢沢永吉が「ひとりでやる」ってのは、こういうことなんだ、と。見てくれ、と。見せるものは、これだけ準備した。そうでなければ虚しいだろう。
入場料を払って、客は観にくるんだ。空っぽのものを観せられたら「腹を立てる」に決まってる。前と同じってのも、そうだ。客も、オレも安心感はあるだろう。でも、それじゃ、解散したことが無意味になってしまう。自分の過去を無意味にしてもいいのか。
「別の世界をひらいていこう」と思ったよ。
金ってことでいえば、あの時にキャロルをひきずって歩いてたほうが、ずっと楽に生きられたろう。
金じゃない。そういう時は、金なんかにしばられちゃいかん。意地があるだろう。矢沢は男だよ。
ファンって、大事。そんなのは常識だ。そんなふうなことは、当然の当然。オレに言わせれば、まず、ファンてのは冷たい。身勝手なのね。これは「悪い」ってことじゃないよ。そういうものだ。よく見てる、オレたちを。だから怖い。そして幼い。そういうこと全部含めて「ファンだ」と思う。それを知ってるか知らないかじゃ、大きな違いがある。
「浮かれちゃいけないし、媚びちゃいけない」と思ってる。オレ、六割は、自分指向でやってる。オレのオリジナリティーを出して説得していく。ファンよりも先を走る。「合わせよう合わせよう」と考えてるやつには、本物はできない。もちろん、「ファンが何を求めてるか」考える。でも、それをあんまり意識したくないんだ。それが信条だね。
オレの「オレ」との闘い。
それをファンが評価すればいい。ファンていうのは怖い、そして身勝手。それでいい。なぜなら、法律に「矢沢のLPを買いなさい。ステージ見なさい」と載ってないもの。自由なのよ。感受性のままに、自然にレコード屋に行って、自由な判断のもとに選べるわけ。
ハート・トゥ・ハート。
泣かせるしかない。こっちで努力するしかない。
ファンは、単純なんだ。ナメてない意味でね、これ。つまり、もっといいものがあれば、そっちにすぐ行くってこと。だから怖い、ナメられない。手を抜いたら、ファンの決断というのは、すごく速いね。何百種類、お店に、レコードが並んでるんだ。その中から、2500円出して、一枚買う。重いよ、これ重い。
肌で考える。
ハートで汗をかく。
自分の目指すものを自分で定めて執念を燃やす。「力を貸してください」って言う前に、自分の欲望。100%確信する。それを具現化していく。
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