【行動経済学】世界は感情で動く
2020/8/14
不合理な直観
必ず正しい答えを導けるわけではないが、ある程度のレベルで正解に近い解を得ることができる方法である。答えの精度が保証されない代わりに、解答に至るまでの時間が短いという特徴がある。
直感(第6感、無意識の認知)は、脳がこれまでの情報を元に判断を下すので、スピードは速いが精度に欠ける。そして、無意識は感情に影響される。直感は、ヒューリスティクスである。ヒューリスティクスは、厳密な判断が必要な認知のプロセスを省いてくれるので、脳は楽である。
直観による誤りの判断
認知神経学は、合理と非合理の関係性である。
- 合理:認知も管理も可能な「手間のかかるルート」
- 非合理:無意識で感情的な「楽なルート」
脳の消費エネルギーは大量なので、エネルギーを節約するように、人間は進化してきた。情報量を増やせば認知のためのエネルギーも増える。
自分では論理的な思考で判断していると思っていても、実は直感で判断していることが多い。これは、認知のゆがみであり、脳のトラップである。そして、脳のトラップは魅力的な情報のときに発動する。
直感の誤りは偶然ではなく、認知のプロセスから起こるので、以下のように対応する。
- 直感の誤りを生み出す思考を知る。
- 本能からくる非合理性をコントロールする。
一方で、直観を理解しても、その非合理性からは逃れられない。
「意思による行動」と「意思によらない行動」
「合理的判断」と「直感的判断」
という両軸を扱う訓練が必要である。
直観の判断思想
コミットメントの法則性
自分が選んだものには良い評価を与え、選ばなかったものには悪い評価を与える。記憶は過去の選択の影響を受ける。もし、選択の長所と短所を記憶しているなら、ジレンマが残って認知にも時間がかかり行動に移れなくなるから。
コミットメントの法則による保有効果
自分が保有するものに価値を感じ、手放したくない。
売る最低価格 > 買う最大価格
株を持ち続ける
政治家の既得権益
フレーミング効果
人が選択するとき絶対的価値ではなく自分の基準で別の判断をしてしまう。同一の選択肢であっても、その時の心理で異なる判断をする。
割合(%)、反対の割合として、言い方を変えることで、全く異った心象を与えることができる。
・不確実な事象に相対したとき、人は感情で判断するので、不合理な選択を認識していても、逃れられない。
・合理的な人は感情がない人ではなく感情をコントロールできる人である。
目の錯覚のように、錯覚と認識していても、脳の誤りを正せないように、脳の判断を別の視点から正すこともできない。
選択肢の一方の情報だけでなく、もう一方の情報や裏返した情報を思考の要素を加える。
【ヒューリティクス】代表性のトラップ
代表的と思われるものを判断の基準にする(ステレオタイプ)。無意識の認知メカニズムによる近道である。
代表性によって、事象を単純化し、本来であれば確率的思考が必要な場合でも間違った判断を下す。論理的に考えた正しい答えを知っていても、納得できない。
【ヒューリスティクス】利用可能性
最近のことやインパクトがあったことなどの思い出しやすいものを判断の基準にする。銃器保持の世界記録は、アメリカではなく、スイスである(兵役は義務で、兵役を終えた男は、銃器を家に置いていい)。
【ヒューリスティクス】アンカリング効果
最初に印象に残った数字や言葉が判断の基準(アンカー)となる。
脳は、複雑な計算や多くの情報に基づいた判断を避けるから、取り付きやすいデータを元に簡略化して判断する。アンカーが降りた地点が遠くてもその効力を発揮する。アンカーが降りる前の評価とアンカーが降りた地点の差が大きいほど有意に働く。
家や車の購入決定後に、安いオプョンから提示するのは、家や車の価格というアンカーを利用している。脳は、それほど重要なものでないと注意を払わない。アンカーとなる数字はうまくカモフラージュされている。
アンカーの対策は、自分で、逆方向のアンカーを降ろすことである。
偽りの相関関係
因果関係がないところにも、因果関係があるように錯覚する。世の中には、そんなに因果関係や相関関係はなく、偶然である。
人間の脳は情報を「ひとまとめ」にする性質がある。実際には何もないところにルールを見つけようとする。ルールは、パターン化されることで情報処理が簡略化される。脳は、情報処理を簡略化して、処理負荷を下げることでエネルギーを温存しようとする。
注意の焦点化効果
ある特定部分に注意を払うように誘動されると、その特定部分だけで判断したり、行動したりする。判断するための重要なすべてに、平等に注意力を払えない。目立つものだけに焦点を当てて判断してしまう認知のゆがみがある。詳細な説明を受けるとそこに注意力が向かってしまい、説明を受けなければ見過ごしていた部分が目につく。
何に焦点を当て何を犠牲にするか?
「幸福とは?」→ ” 労働 ” に焦点を当てると、” お金を媒介とした贅沢 ” を犠牲にしている。
GDP、自殺率、他者との関係、社会組織の参加、失業率、離婚率、政治、宗教であり、収入はなかった。
高収入とストレス(否定的な感情)は相関がある。注意の焦点化効果によって、収入が注目されているが、実際は、本来の幸福とは、高収入(&ストレス)とは言えない。
損失回避性
遺伝子レベルで損したくない。
選択肢が増えすぎると選択の多様性を利用しなくなる。選択肢が増えると比較する頻度が増え、損失回避が働く。
現状のコストより、変化後のコストを多く見積る。
→ 現状維持 + 損失回避
人は、ディルト信仰がある。人を行動させるのは、大きなパワーが必要だから、デフォルトの設定が大事である。
後悔の理論
後悔を最小に抑えるように思考する。後悔の気持ちを先取りする。
後悔は感情と認知が強く結びついている。後悔から生じる判断は不合理である。
直近では、行動を後悔し、長期間だと、非行動を後悔する。
他人とのつながり
自己奉仕的バイアス
成功は自分のおかげで、失敗は他人のせいにする。成功は自己高揚バイアス、失敗は自己保護バイアスである。記憶も、脳がバイアスをかけてしまう。
セルフハンディキャッピング
自分の失敗が予期されるときにはハンディキャップがあるようにふるまう。
例えば、テスト前に掃除をはじめてしまう。テスト前に全然勉強してないと言う。言い訳をすることで言い訳を作ることで目の前のストレスやプレッシャーから逃げようとする心理である。
帰属のエラー
自分や他人を評価するとき平等に扱えない。
他人は、性格や言動といった内的要因で判断し、自分は、状況や外的要因で判断する。
バーナム効果
誰にでも当てはまりそうな性格を自分の性格として受け止める。
→願望的思考という心理メカニズムや自分のために意味を見つけようとする心の傾向もある。
占い師は、占う人のことを1つか2つか言い当てて、満足してもらう。
フォールス・コンセンサス効果
他人も自分と同じように考えると思うこと。
⇔フォールス・ユニークネス効果:自分を特別視すること
ある行動が常識を外れれば外れるほど、フォールス・コンセンサス効果は高い。
集団思考
集団との同調意識であり、集団思考への信仰であるから、集団による合義が不合理な決定を下してしまう。大きな集団に属していると、その安心感で、自分の意見をその集団の意見に、無意識に調整してしまう。
集団規範
人が同じ集団に属しているなら信頼でき、同じ集団に属していないなら信頼できない。生存のための社会規範である。他集団の人々を均質に考え、自集団の人々を多様だと考える。
偏見は、これまで育ってきた文化である。
自信過剰
自分の判断が正しいのは70~80%だとしても100%と考える。
女性の方が、自分を客観劇できていて、男性の方が自信過剰である。
自分の能力を適切に評価できるかは、文化や男女差がある。
公表バイアス
ポジティブな面を多く公表する(ネガティブな面をふせる)
記憶
ピーククエンドの法則
経験の判断は、その経験で強烈な時と、最後の時である。
経験の記憶は、主観で変えられる = 人間の記憶は捏造される
→終わり良ければ、すべて良し。
記憶は事象に感情をからめて再構成される。
未経験の「冷めた頭」の選択と経験後の「熱い頭」の選択は異なる。
事前の選択では、快適である = 苦しくない
事後の選択では、快適である = よりよい記憶が残る
例え、その苦しみが大きくても、実際の快適と異なる選択をする。
後知恵
何かが起こってから、それがさも当然のように説明する。世間の解説の大部分である。未来はわからないのだから、その本質を見極め、解説の真意を問う。
たまたま運が良くて、成功しただけでも、その成功方法を万能だと考えてしまうことがある。
思考の歪み
ハロー効果
モノが1つの特徴で全体が良く見えたり悪く見えたりする様
→AさんのことをAさんのことを知らないBさんに話すとき、かんたんにAさんの印象を操作できる。
ハロー効果は広告に有用であり、特にブランド戦略では重要である。すべての人はハロー効果ら逃げることはできない。ワインは高い方が美味しく感じるし、ラベルないビールの味を区別することは難しい。
願望的思考
起きて欲しい確率を高く見積り、起きて欲しくない確率を低く見積ること。
宝くじの当選確率より交通事故の死亡率が高い。
一方で、願望的思考は、脳科学でのホメオスタシスとの関連があり、良い結果をもたらすこともある。
投資の決定の前に脳の2つの領域が活動する。
- 側座核 : 感情悩の喜びの中核
- 島 : 本能的感覚(身体的苦痛)やそれに伴う否定的な感情
リスクの高い株を選択しようとすると側座核が活性化する。
リスつの低い債券を選択しようとすると島が活性化し、株と逆の感情になる。
リスクとリターンの関係は感情や本能によって歪められる。ポートフォリオ・フロンティア理論でノーベル経済学賞を受賞したハリーマーコウィッツは、リスクに対する最大のリターンのために 投資を分散したり組み替えたりして、最大の収益を上げる方法を考えた。しかし、感情に抗って、その理論を実践できなかった。将来後悔したくないから、自分の投資を 株 : 債券 = 50 : 50 とした。
頭でいろいろ、考えても、結局のところ、感情が勝ってしまい、頭で考えたことを実践できない。例えノーベル賞受賞者でも。
予言の自己成就
自己実現のための行動が、社会現象として、その通りの結果になる。
例)プラシーボ効果
注意の焦点化効果
ネガティブな質問かポジティブな質問によって回答は、変わる。
意図的に調査結果を改変できる。
確実性効果
確率に主観的重み付けをする、特に、0%、100%に近づくと敏感である。
「50%→52%」と「98%と→100%」は、2%の差なのに重みが異なるように感じる。
脳の特徴
脳は、発見したいものを発明する性質がある。
脳は、見えてはいても、見ていない。変化があまりないときや興味がないことは、視界に入っていて、認知していても、認識しない。
脳は、思った通りにうまくいくことを望むから思考が歪む。
脳は、感情によって無意識で不安定になることがあるし、理性は、感情に抗えない。
脳は、感情的コスト > 経済的コスト
記憶
記憶は、複雑な認知のメカニズムによって成り立っている。
思い出は、不動のコピーではない、取り出すと脳に改ざんされている。記憶、思い出はビデオカメラではない。脳に記憶が保管される時、情報の整理と加工が実施され、保管された場所が移動するときなどで、更に変化していく。
情報が多いほど、誇張した表現が多いほど想像力が活発に働き、記憶において、事実と想像の区別がつかなくなってしまう。ショッキングであればあるほど記憶に残りやすい。
記憶は、正しいことをしてなかったではなく、正しいことをしたとしたい。
辛いことに耐えられないから、無意識に都合のよいことだけを記憶に残そうとする。
→記憶は論理的でない。
年を取るほど記意はよりあざやかになる。
脳も記憶も曖昧だから過信しない。
自分で規則を作って、認知を歪ませることがある。それは物事が予想できない時に起こるので、物事を俯瞰で、もしくは、別の視点で見る。
ダイエットは明日から
明日からダイエット:今日しなくても、明日すればいいと考えて
明日に延期するのに、自分は意志が強いと思っている。
不確実な将来の大きな利益より、
確実な目の前の小さな利益をとる傾向がある。
それほど今の欲求は強い。
コメント